遭難したら服を脱ごう。
何を言っているんだ?と思われそうですが、これはある方のツイートを見て思ったことです。
関西で山登り関連のチラシ漫画を描いているので実感するが、これは遭難時、濡れた衣服だといかに危険かがよくわかる。低体温症であまりにあっけなく亡くなる。 https://t.co/IgLCIvYhBW
— 高波伸 (@takanamishin) 2018年12月20日
この方は「脱ごう」とまでは言ってないので、「脱ごう。」の部分は自己解釈ですが、なぜ遭難時に濡れた衣服だと危険なのかを水と空気の性質の違いについて注目して説明していきましょう。
ちなみに、察した方もいると思いますが、僕が脱ごうと言っているのは濡れた服に限ったことなので乾燥している服はもちろん脱ぐ必要はありません。
”冷える”ということ
まず、人間は気温や水温に左右されることなく体温を一定に保つことができる恒温動物であり、外が気温の低い環境であっても体温を一定に保とうとします。しかし、長時間寒い環境に置かれることで、身体の熱が奪われ体温が低下し、適切な範囲の体温を維持できなくなると寒いと感じます。
この寒さを感じるようになるメカニズムからも分かるように、熱は高いほうから低いほうへと移動するので、外気温が体温より低いと身体の熱が奪われて体が冷えていくのです。
熱の伝わりやすさ
物質がどのぐらい熱を通すのかを示す伝熱係数というものがあるのですが、水の伝熱係数は乾燥空気の20倍以上。つまり、水は乾燥した空気よりも20倍以上も熱を伝えやすいということになるのです。外気温が低いとき、身体は外気に熱を奪われます。濡れた衣服を身に着けていると、このスピードが20倍以上になると思うと、遭難時には致命的なことになるでしょう。
熱の奪われ方
濡れた衣服を身に着けないほうがいいというのは、熱の奪われ方にも原因があります。人間は暑いときには汗をかきます。汗をかくということには、汗が蒸発する際に体の熱を奪って気化し、体温を下げるという役目があります。しかしこれは汗に限ったことではなく、水についても同様に言えることなのです。つまり、濡れた衣服を身に着けていると、服が含んでいる水分が気化するとともに身体の熱をどんどん奪っていき、結果として体温が下がることになるのです。
水の温まりにくさ
圧力または体積一定の条件で単位質量の物質の単位温度を上げるのに必要な熱量を比熱容量といい、25℃、1気圧の条件下では水の比熱は4.18×103、乾燥空気の比熱は1.01×103です。
少し難しい言い方をしましたが、この比熱が大きいほうが温まりにくいということです。水は空気と同じだけ温度を上げるのに約4倍の熱が必要となるのです。つまり、濡れている衣服を身に着けていると、そうでない場合に比べて4倍ものスピードで体温が奪われていくのです。
まとめ
濡れた衣服を身に着けるということは、直接空気に触れているよりもはるかに速いスピードで体温を奪うことになるのです。冒頭で紹介したツイートに書いてあった、遭難時に濡れた衣服を身に着けていたら低体温症であっけなくなくなってしまうという意味がよく分かりますよね。これが僕が「遭難したら服を脱ごう」と言った理由です。この記事の初めにも伝えた通り、衣服が乾燥していたら脱ぐ必要は全くないのですが、衣服が濡れていたらその衣服で身体を拭いて脱いでしまったほうが体温は奪われにくくなるのです。寒いからと言って濡れた服を着続けるのではなく、自分の体温をより高く保てる方法を考えましょう。
ちなみに、雨に濡れて風邪を引くときも、同じ理由で身体が冷えて風邪を引くということはよくあることなのですぐに乾いた服に着替えましょう!